攫ってほしいと頼んでも ♔setters♔ ‐HQ‐
第1章 幼馴染みは森の中で姫を見つけた
影山が田中先輩に絡まれてる間、頬を掴まれてる手が少しずつ緩んでいく
思いきり振り切って、近くにいた日向の背後に隠れる
「?! くるみ?」
『日向助けて!影山がまたイジメてくんの!』
「おい日向!そいつを渡せ!」
ジリジリと歩み寄ってくる影山に対して
日向が私とさして変わらない体を大きく広げて守ってくれる
「女子をイジめるとか影山男としてサイテーだぞ!」
『そーだそーだ!』
「日向てめぇも巻き添えくらいたいんだな、わかった」
そのあと影山によって私と日向はボロボロになりました、と
『影山ほんっと容赦ない…ひどっっ』
「ホントだよな、俺にならまだしも
くるみにも絞め技してたもんな」
「だいぶ力抜いたぞ」
「そういう問題じゃないの
これが"幼馴染み"ってもんなんだな」
幼馴染み、か
北一のときも周りにそう言われた
あのときは影山とあんまり話したことなくてしっくりこなかったけど
今もあんまりきてないな
影山もしっくりきてないのか少しだけ考え込んでるような顔になる。きっと幼馴染みってもっと深くて仲がいい感じな気がする
『影山は幼馴染みだけど意地悪なの
私は影山のこと…心配してるけど』
去年のあの光景が過る
はっ
口にしてしまってからやってしまったことに気付く
慌てて影山を見るけど影山本人は深く捉えてないみたいだった。よかったぁ…
「俺だって心配くらいするぞ
今日だって心配じゃねーかもだけど、気にしてた」
「意味わかんねぇ、どっちだよ!」
影山の言葉に変に胸騒ぎがする
その続きを言わせちゃいけないんじゃないかって
違う
言わせたくないって
『影や…』
「だってコイツ、及川さんと付き合ってたから」