攫ってほしいと頼んでも ♔setters♔ ‐HQ‐
第3章 ウソと人魚の心を手放した代償
今の声及川先輩!?と岩泉先輩だ!
それもかなり近いところから聞こえたけど
後ろを振り向くとすぐ傍まで迫ってきていた
オロオロする私に対して国見は冷静で我関せずって顔してる
国見は首を捻ったあと、耳元に口を近付けて囁くように言う
「 助けて欲しい? 」
ドキッとして国見を見上げると余裕のある笑みで私を見下ろしていた
…国見がすごく、年上に見える…
「あれ、国見か?」
「ん、ホントだ」
やば…!気付かれた
そう思った瞬間
肩と腰に手を回され180度体が回転する
国見の体によって二人の先輩から私は見えなくなり、抱き締められる形で視界が妨げられる
見えないけどこの状態にさぞかし及川先輩と岩泉先輩はギョッとするだろうなぁ…
「国見ちゃん、やるね〜」
「…おい国見そういう事は他所でやってくれ」
「あ、すみません、コイツが我慢できないって抱きついてきて」
にゃ!?なんていう理由!
顔を上げようとしたとき肩に置かれていた手が私の後頭部を捕まえて胸元に押し付ける
国見の少し早い鼓動が聞こえてくる
「じゃあ俺達は先に行くからお前もその、なんだ…程々にしろよ」
「はい岩泉先輩」
二つの足音が横切るのを確認する
緊張が解け体の力が抜けていく
…一時はどうなるかと思った…
「ごめん、岩ちゃんちょっと先行ってて」
国見の手は以前力が込められたままだ
なにも見えない、けど…なんでかな
及川先輩すぐ近くにいるようなそんな気がするのは気のせいだよね…?
「国見ちゃんにカノジョいたなんて知らなかったよ」
「まぁ言ってなかったんで」
「どんな子?見せて」
どうしよう…でもいっそのこと姿見せて…さっき向き合いたいって思ったし…でも怖い、及川先輩の顔を見れる自信がどうしても、ないから
無意識に国見のシャツを握り締めていた
「見せられないです」
後頭部に置かれていた手が撫でるような仕草に変わる
まるで小さな子供をあやすようなそんな柔らかく優しい動き
「結構ベタ惚れなんで、他の男に見せたくない、です」
「へぇー…余計気になるけどまっいいや
国見ちゃんにそこまで言わせるなんて、大した子だね」
「…まぁそうですね、本当に大した子です」
お母さん!?
でもひとまずよかったよぉ…
「…平気で手の届かないとこまで進んでいくから」