攫ってほしいと頼んでも ♔setters♔ ‐HQ‐
第3章 ウソと人魚の心を手放した代償
え、ええ?
混乱する私をよそにそのまま手を引かれ、外に出ようとする
『ちょ、国見…?何してるの』
「何って…行きたいんでしょ、体育館」
それは行きたいけどっ…
まだ日向と影山が来てない
国見と話してる内に来るかなって思ってたのに全然来ない!
「今日ちょっと職員会議あって部活始まるの遅いんだよ」
『へぇー…じゃなくて!
さっきの話聞いてた??私日向と影山待ってるんだって』
すると国見は手を離して私にゆっくり顔を寄せる
…国見の背結構ある
いつの間にかこんな身長差ついてたんだ
「これって不法侵入だよね、それを見つけた俺
有栖川 に拒否権なんてないでしょ」
『…ごもっともです』
再び恋人繋ぎをされ、引っ張られるまま足を進める
…日向と影山には後で連絡しておこう
気を遣ってくれてるのか歩く速度はそんなに早くない
『…国見って身長いくつあるの?』
「伸びてなければ182くらい」
『うわっ…でかっ』
「 有栖川 の周りの方がもっとデカいじゃん」
それもそうかも、と思ったとき
また笑った…背中からだから顔は見えないけど国見が笑ったのが分かる
…なんでもっと
向き合おうとしなかったんだろ
影山のことを言い訳にして
国見からも、及川先輩からも逃げてたんだなあ私
『…………っ』
切なくて胸が掴まれたように痛む。
「俺 有栖川 のこと嫌いじゃない」
体育館らしき建物が見えてきて四月の練習試合の記憶と合致していく。国見の言葉は私を見ることなく紡がれていく
「でも嫌いじゃないからダサい態度取ってたかも、ごめん」
嫌いじゃないから…?
逆じゃないだろうか??
でも国見がどんな思いで言ってくれるのか分かるよ
体育館前に着いて私達は自然と足を止める
『うん、それほど大事に思ってくれたんだよね
ありがとう』
ハッと振り返った国見はまじまじと私を見る
見張らせた目は何か言いたそうで、言うか迷ってる感じだった
…変なこと言ったかな??
「あーあなんで職員会議のせいで部活の時間が遅れなきゃなんないのさ」
「おいグダグダ言ってねぇでサッサと歩けクソ及川」