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攫ってほしいと頼んでも ♔setters♔ ‐HQ‐

第3章 ウソと人魚の心を手放した代償




久しぶりだった
国見とこんな近くで話すのも

そんな風に笑うとこを見るのも_____




「…なに」

『国見が笑ったから…』

「…何を言い出すかと思えばほんとに何」

国見は顔を顰めて私から視線を逸らす
その横顔はあの頃、視界に映ったときよりずっと大人びて見えた


『…だって、国見私のこと嫌いだから
あんまり笑顔見せてくれなかったから』

出来るだけ明るく言ったつもり
私には無神経なとことかあるから、国見みたいなタイプにはどうしても呆れられがちで鬱陶しがられるのは当然だって知ってるから。

だから気にしてないよ
そう言いたかった


「は、誰がそんな事言ってたの」

『え、誰も言ってないけど』

「じゃあなんでそんな事言うんだよ」


違うの?でも…
じゃあ国見がずっと私に向けていた目はなに?


中学三年のIH予選
影山のトスの先、誰もいなかったあの日

ベンチに下げられた影山
誰よりもコートに立ちたかった彼がどんな気持ちでいるか想像しただけで辛かった
試合は負けて、コートから追い出されるように各々帰路につく

一人でいる影山の背中
歩み寄ろうとすると前に立ち塞がった国見が私に話があるって引き留めた


でも、私は止まらなかった
国見の話がどんなものだったかは知らない
『ごめん』それだけ言って通り過ぎた



それから結局話の内容は聞けずじまいだった
あのあとから国見と話すことは
おろか目が合うこともなくなった

たまに私に向ける瞳が痛々しくて嫌悪で満ちていたことくらい







『私のこと…嫌いなんじゃないの…?』

国見は口をぎゅっと結んだあと少し間を開けてから言う

「嫌いか、嫌いじゃない、なら別に嫌いじゃないけど?」


「…嫌う理由ないし」


えー…そうだったの
分かりやすく肩を落とす
なんだそうだったんだ、なんだぁ…

ホッとしたのもあるし、今まで国見に嫌われてると思って自分から動くことが迷惑だとばかり思ってた

なんだ…話しかけてよかったんだ



『なんだ…』

すると国見の手が私の手に滑り混んでくる
まるで恋人同士が繋ぐみたいに指を絡ませ合う握り方で

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