攫ってほしいと頼んでも ♔setters♔ ‐HQ‐
第3章 ウソと人魚の心を手放した代償
今度こそ及川先輩が体育館に入っていき国見の腕から解放される…最後どういう意味…?
「はぁー変な噂広まらないといいけど」
『うーん、ごめんて
で、でも途中からすごいこと言ってたよね国見』
「すごいこと?」
『うんベタ惚れ、とか見せたくないとか!
国見ってなかなか演技の才能あるよ!』
興奮気味に言う私に分かりやすく渋い顔をする
まるで自分に言われてるんじゃないかってうぬぼれそうになるくらいだったもん
「…なんか負けたくないって思った」
『?及川先輩と何か勝負してたの』
「………」
無言の圧を感じてやっちゃった、と思いながら黙り込む。…あ!!近くに紙パックジュースの自販機があって軽い足取りで駆け寄る。
『国見ー!バナナといちごとヨーグルトどれがいいー??』
「どれでもいいよ」
お礼に奢ろうと思ったけど、どれでもいいって一番困る。数秒悩んだ末にボタンを押して自販機から吐き出されたジュースを受け取る。
『はいっどーぞ!』
「ありがと…って…三個もいらないんだけど」
『でもどれでもいいって』
「それ別に全部って意味じゃないだろ」
結局国見はいちごしか受け取らないと言うのでバナナは自分で飲むことにした
…ヨーグルトは影山あたりに後で差し上げよう
あ、でも日向の分ないと拗ねるかな??
バナナの味が口中に広がっていくのを感じながらそんなことを考えていると
「前から思ってたけど 有栖川 って面白いとこあるよね」
『…それなんか最近よく言われる
変とかズレてるとか人を変人みたいにさぁ』
「あー今言ったの全部わかるかも」
『わかんなくていいし!』
ジュースは丁度いいくらいの冷たさで乾いた喉を一瞬で潤していく
「そんで多分、俺と同じこと想ってる」
『まぁ同じようなこと考えるからそうなんでしょ』
その時だった
スカートが震えて辺りに着信音が響く
着信元は影山になっている
あ、連絡するの忘れてた…
「誰から?」
『か、影山から…また怒られる…』
出るのが躊躇われるし、切ると後が怖い
迷ってる内にスマホは勝手に大人しくなる…
あぁぁあ、また説教される…
「…怒られる?」
『そうだよ!怒られるの!!』