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攫ってほしいと頼んでも ♔setters♔ ‐HQ‐

第3章 ウソと人魚の心を手放した代償





入ったのは誰もいない物置部屋みたいな部屋で
劇に使うような小道具や、使われてない教科書が山積みになっていた

入るなり座り込んで酸素を肺に取り入れる
部屋は日光がカーテンによって遮断されていて薄暗い

息を整えながら隣の影山を盗み見る
普段と違う制服で居座る彼が影山じゃない誰かだと思った


その時スカートの中のスマホが震える
取り出すと日向からラインが来ていた

〈助けて…〉に加えて泣きのスタンプが二つ
私のスマホを覗き込んだ影山はボソリと言った

「あいつもう手遅れか」

『変なこと言わないでよ!とりあえず、今どこにいるの、と』

送信し終わるともう一つ通知が来てることに気付いた
玲奈からかな?確認するとそれは月島くんからだった




〈何かあったら連絡して〉




一言そう送られていて、その場で数秒固まる
これは心配、してくれてるんだよね
胸の中にジワジワと広がって温かくなってくる

『ねぇ、この状況って何かあったに入るのかな』

「は?」

私は月島くんから送られてきたメッセを見せる
伝えなくてもいいことかもしれないけど、月島くんがこうも心配してくれてるのに何も言わないのもと思ってしまう

あっ
スマホをおろし、昼休みでのことを尋ねてみる

『ねぇそーいえば
昼休みのとき月島くんと何話してたの?』

「なんのことだよ」

『え、ほら私が制服用意できるって言ったあとに…』


「あぁあったな
…お前のことだボケ」


私のこと…?
聞き間違いかと思って困惑する

『…もしかして二人揃って悪口?!』

「んな訳ねぇだろこのドアホ!」

わかってるよ!ジョーダンなのに!
影山の言葉に拗ねたように背を向け、体育座りする
足元を見ながら何か言いたげな影山が目に浮かぶ




「あぁ…クソッ…
月島がお前から目を離すなって言ってきたんだよ」


だいぶ子供だと思われてるわたし…
心配していた訳じゃなさそ

「それからお前を渡すな、って」









『…え…?』


言葉の意味が理解できなくて振り向くと
距離を置いて座っていたはずの影山が距離を詰めてきている


『意味…わかんな…』

「言葉通りの意味だろうが
お前を他の男に触らせたくないんだよ」


それでもよく分からなくて反論しようとしたとき無理やり唇を塞がれ、用意した言葉は喉の奥に溶けいていった
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