攫ってほしいと頼んでも ♔setters♔ ‐HQ‐
第3章 ウソと人魚の心を手放した代償
烏野からバスで約20分くらい
私達三人は四月以来そこに足を踏み入れていなかった
改めて見ると烏野より圧倒的な敷地を面してる
門の前で私達は立ち尽くし、やがて影山が低い声で言った
「…行くか」
「『コクリ』」
他校の私達が侵入してもバレないのは彼らと同じ制服を着用してるからだ。日向も影山も普段の学ランではなく、ここの学校に合わせたブレザーを着ている。普段の紺色ではなく白色のブレザーに目が慣れなくて余計緊張感が増す。
「なぁ体育館ってどっちだったけ?」
『え、覚えてないよ、影山は?』
「知らねぇ、歩いてれば見つかるだろ」
……
大丈夫、かな
私達はいま青葉城西高校の偵察にやって来ている。なぜこんな事になったかと言うとそれは今日の昼休みまで遡る必要がある
「た、体育館使えないって…じゃあ部活出来ないってこと??」
日向が血相を変えて言うのを宥めながら清水先輩から聞いたことをもう一度繰り返す
『うん、でも点検は一日で済むらしいから今日だけだよ』
「ぐぅ〜〜〜一日でも部活出来ないのはなんか悔しい!」
…日向ほんとにバレー好きなんだなぁ
頭を抱えて首をひねる日向を見て思わず笑みが溢れる
『んじゃあ、他のみんなにも伝えてくるね』
日向とは同じクラスだから楽だけど
他のみんなはクラス違うから昼休みのうちに言いに行かないと
「俺もいく!影山の悔しそうな顔みてやる」
『え、じゃあ日向が影山に伝えてきてよ
私は月島くん達んとこ行くから』
「そ、それはイヤだ!
くるみが言って、俺は見るだけ!」
『胸を張って言えることじゃないからね』
私達は一組だから先にクラスの近い、三組の影山の教室に赴く
でも残念ながら影山は留守みたい
日向は「あいつ逃げたな」なんて横でぶーぶー言いながらも四組の月島くん達のとこまでついて来てくれる
月島くんと山口くんはどっちも教室にいて、まとめて呼び出す
『…てことだから今日の部活はなし!』
二人は日向ほど慌てず、それなら仕方ないかとでも言いたげに頷いた
「でもIH予選まであと二週間もないよね
一日でも休みがあるとちょっと気が引けるっていうか」
山口くんの言葉に日向がジャンプを繰り返しながら食いつく