攫ってほしいと頼んでも ♔setters♔ ‐HQ‐
第3章 ウソと人魚の心を手放した代償
「だろ!!あーバレーしたい!スパイク打ちたい!」
ぴょんぴょん跳ねる日向の頭を月島くんがガッと掴んで抑える
「飛び跳ねるな
点検なんだからしょうがないでしょ」
「そんな事言って月島も悔しいくせに!」
「僕的にはこれくらい休みがあったほうが嬉しいけどね」
言い合う二人を前にして私と山口くんは目を合わせてお互いやれやれと口元を緩ませる
そのとき廊下の奥からこちらに向かってきてる人影に気づく
影山だ
『影山ー!!おーいー!!!』
廊下の端に届くまで声を張ったおかけで影山は私に気付くけど、代わりに何人かの視線に晒される
「君も君でうるさい、こっち来てから声かければいいよね」
月島くんがジロリと睨むけど、なんとなく笑顔で返してしまう
呆れられたかな?月島くんは溜息をついてメガネを指で押し上げた
「お前うるせぇよ」
現れた影山の第一声はそれ
片手にはぐんぐんヨーグルトを持っており、これを買いに行ってたのかと納得した
『今日の部活なんだけど…』
私は三人に説明したどおりに影山にも伝える
影山はさほど表情を変化させることはなく日向がいうほど悔しそうでもなかった
「なるほど、分かった」
「え…お前反応うっす」
「あ?どんな反応すればいいんだよ」
「……」
影山はぐんぐんヨーグルトを飲み干し、片手でパックを握り潰す
「青城でも行くか」
『え』
「「「は???」」」
影山の顔に私達の視線が一斉に集中する
影山を除いたみんなの思考がいま同じだと思う
「お、お前まさか大王様のところで一緒にバレーしに行くのかよ…」
「そんな訳ねぇだろボケェ、偵察しにいくんだよ」
月島くんと山口くん達は信じられないと顔を驚きに歪めてる
私も驚いたけど、なんだかワクワクしたのも事実だった
「で、でも見つかったらどうすんだよ!」
「そんなこと見つかったら考えればいいだろ」
「…まさか王様がここまでバカだとは思わなかった
見つかるに決まってるだろ、なに大会前に問題を起こそうとしてんだよ」