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攫ってほしいと頼んでも ♔setters♔ ‐HQ‐

第2章  お転婆アリスを追いかけた迷いネコ





烏野は音駒から一セットも取れず練習試合は終わりの時間を迎えようとしていた
音駒手強い…けど、みんなこれからだよね

伸びしろがあるっていいなぁ

影山のが事がほっとけなかった
そして同じくらいその成長を近くで見ていたかった

でも今は影山だけじゃない
烏野の、みんなの成長を見ていたいと思う





「お、いたいた」

『あ、クロさん!どうしたんですか』

クロさんは一瞬眉をひそめたあと直ぐ様その顔に笑みを作る

「いやいや用ってほどの用じゃない
研磨のことこれからもよろしくなって言いに来ただけ」

『わ、私こそよろしくお願いします…?』

口元を隠した右手の指の間からクロさんが笑いを堪えてるのが分かる
震わせていた肩が落ち着いたとき

「はぁー…聖職者ちゃんホント面白いよ…
つい我を忘れて爆笑しそうになる」

あ…笑った
今朝やさっきも、どの笑顔も偽物だと思ったけど
今のは本当の笑顔

大人びた彼が子供のように屈託なく笑う姿
そんな姿を見てると自分の口元も自ずと綻んでいく

それからクロさんの表情は真剣なものへと変わる


「でもさ、研磨は多分、本気だろ
後から逃げたいなんて言えなくなるかもしれない
ていうかもう手遅れか…」


「そのとき聖職者ちゃんは後悔しない?」


クロさんは真っ直ぐ私を見つめてくる
何か裏があるわけじゃなくてただ私の答えを待ってる


『…研磨が何かに本気なら私も本気で応える
研磨の傍にいることで後悔するなんて絶対に思わない』


研磨は一流の魔法使いで何でも器用にこなせてしまう。けど研磨は他人には見せない、多分もっと深い彼がいるんだと思う

それは今までずっと表には出さず隠し続けてきたもの


私はそれに触れてみたいのかもしれない___



『それに研磨と話してるの楽しいから!』

「…あぁそうだな
さすが聖職者ちゃん、研磨が見込んだだけはあるな」

『…その呼び方止めてください…
私の名前 有栖川 くるみです』

研磨に怒られるの私なんだから…
プーっと頬を膨らませると、クロさんは親指と人差し指で私の頬をつねってしぼませる

「じゃあ俺も言わせてもらいますけど
クロさんって呼ぶの止めてもらえませんかね??」

『え、でも研磨が』

「黒尾鉄朗っていう立派な名前があるんで
そっちでお願いしまーす」

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