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攫ってほしいと頼んでも ♔setters♔ ‐HQ‐

第2章  お転婆アリスを追いかけた迷いネコ




『クロさんじゃダメなのかぁー』

「なんかジジ臭くて嫌なの
ほら呼んでみー?黒尾さんって」


『黒尾さんっ』

「そーそー
それでもっと敬称込めてくれればよりいいかな」


そう言いながら黒尾さんは右手で私の頬をびよーんと引っ張って遊び出す。ほっぺが伸びた私の顔を見て、面白いのか更に上機嫌に笑ってる


『…てつろー』

「はい?」

『あ、いやさん付けだとジジ臭いのかなと思ったから…』


黒尾さんは目をまん丸にして、私のほっぺを伸ばしたままフリーズした。動かなくなった黒尾さんは五回目の呼びかけでようやく口を開く。


「い、いやないし、あり得ないから…」

『?』

「っ…だからその!キョトンとするの止めなさい!」

黒尾さんはそれだけ言うと顔を抑えて私に背を向ける
ジャージの゛NEKOMA ゛の文字が目に入る

「よく聞けよ、俺の下の名前を呼び捨てにしていいのは彼女くらいなんだよ!…いないけどッ」

『はぁ…気をつけます』

「い、いやもう聖職者ちゃんはいいや」

『だからその呼び方!』


黒尾さんは再び私と向き合うとおでこに大きくデコピンして言い放つ

『って!』

「一年坊のくせに生意気…あ、坊じゃねぇか
まぁいい、次に会うときは七月の合宿になるな
IH予選せいぜい頑張りなさいよ、じゃあな」

『あ、黒尾さんも、頑張ってください!また!』


七月、か…
だいぶ先のようであっという間だろうな

音駒の方々を見送ったあと、各々その場で解散
影山とは家が近いので自然と二人で帰ることになる


『IH予選まで一ヶ月切ったね』

「あぁ、全部勝つぞ」

『うん、応援してる』

影山が立ち止まり私の足もつられて歩くのを止める
一度下を向いた影山はいつもの迷いのない目で私を映す

「及川さんの…青城にも勝つ」

『うん、当然だよ、勝たないとダメだよ』


立ち尽くす影山を置いて先を歩く

烏野の…みんなの成長を近くで見ていたい
でも私は及川先輩が_____







持っていたバッグが手から離れて落下した音が耳に届く
影山の腕が背後から私の肩に強く巻き付いてくる

密着しあってる体から伝わってくる温もりにひどく安心する
たとえ影山の顔が見えなくてもそこにいてくれるなら
私は…


「…応援するな」






きっと及川先輩を忘れられるから
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