攫ってほしいと頼んでも ♔setters♔ ‐HQ‐
第2章 お転婆アリスを追いかけた迷いネコ
研磨は後ろに手をついて私から視線を外し空を仰ぐ。少し長い彼の毛先が風に靡かれ、小さく暴れてる。
「おれの代わりに部活に出て
それで重い荷物代わったり、ていうか今日持たされたけど…」
『それ!回復カンケーないじゃん!』
「どうせ回復するなら疲れるだけ時間の無駄」
『研磨ふてぶてしい』
着メロが鳴ってズボンからスマホを取り出す
着信元は影山からだった
…なんか電話出たら怒号浴びせられるのが容易に想像つくなぁ
私は着信拒否して再びスマホを仕舞う
もう研磨と話して随分時間が経つ
「…時間ダイジョーブなの」
『え、っと正直…ヤバいかも』
「だよね、じゃなきゃ電話なんてかかってこないだろうし」
なんだろう別れるの寂しい
研磨は多分この辺の人じゃない
せっかく仲良くなったのに…
「おれのことはいいから、行きなよ」
『え…』
「今頃クロが近くまで来てると思うし」
クロ…??
私は弁当が入ったビニ袋を両手にひっ提げる
…研磨は寂しくないのかな
躊躇しそうになる足をなんとか動かす
『え、えっとお迎えの人すぐ来るといいね…!
少しの間だけどすごく楽しかった…
またいつか話そうね!!』
うぅ…感極まる…
胸いっぱいな気持ちになっていると研磨はキョトンした顔からニヤニヤし始める
「あぁそっか
うんでもいいや、その方が面白いし」
『ほえ?』
研磨は私に歩み寄って距離を詰める
研磨といるとなんだか不思議な気分になる
どこか特別感というか別の世界に迷い込んだような
「ねぇ くるみさっきの話なんだけど」
『うん?』
「その聖職者になる、ってやつ」
『あぁうん!』
研磨は私が思ってるよりも
ずっと頭が良くて賢い
そして、私なんかよりもずっと"魔法"が使える
「あれは"おれだけの"って意味でいいんだよね」
「他の誰でもないおれだけのために回復魔法を使ってくれるんだよね」
「そうだって約束して?」
『うん約束するよ
私は研磨専属の聖職者だから!』
「うん、ありがと」
「 くるみ」