攫ってほしいと頼んでも ♔setters♔ ‐HQ‐
第2章 お転婆アリスを追いかけた迷いネコ
『え、じゃあ研磨…一つ年上なの!』
てっきり年下か同い年だとばかり思ってた…
研磨は猫背姿勢を保ちながら気怠げに言う
「体育会系の上下関係とかあんま好きじゃないけど くるみはちょっとオーバーだよね」
『すんませんしたっっ』
研磨は「はぁ〜うぅ…」と唸りながら立ち上がる
今の今までずっと地べたに座り込んで話していたのをすっかり忘れていた。ズボンについた土をはらいながら同様に立ち上がる
「 くるみのせいで足腰筋肉痛…」
『だからごめんねって』
「こういうとき回復キャラいてくれたらいいのにって毎回思う」
『回復キャラ?』
ゲームの話かな??
額に滲んでいた汗を冷やしてくれる風がやけに心地良い
…研磨の髪、金髪だけどいつ染めたんだろ
「そう、白魔道士とか聖職者のこと」
『ふーん?…研磨の筋肉痛治してくれるんだ』
「うん、いたらね
でも現実はそんな甘くない」
私にとっては何気ない会話の返しだったにすぎない
いや、うそ研磨のこともっと知りたいって思った
だからそのもっと先まで踏み込みたくなった
『じゃあ、私が研磨を回復させたげる!』
菜の花の匂いが鼻腔を擽る
揺れ動く葉が日光を遮り私達に影をつくる
「…何言ってん、の」
『だから私が聖職者の代わりに研磨を回復させてあげるの!』
「…はぁ、意味分かんな…」
研磨が余りにも現実離れしたこと言い出すんだもん
なんだか私もなんでも出来る気分、ていうのは大袈裟だけどそれに近かったのかも
ニッコリ向けた笑顔に「やっぱり くるみは変…」って返されるんだろうな、なんて苦笑しそうになった
『研磨が疲れてたら元気づけるくらい……』
また鬱陶しそうな顔されるかなと思って研磨を見る
研磨はやっぱり猫みたいでその目をまん丸にして、ちっとも動かない
しばらくお互い動かず、何も言わない
『…けん、ま…?』
研磨は私の呼びかけにようやく反応を見せる
口元を少しだけ緩ませて、小さく笑う
んん…??
「 くるみ」
『なに?』
「じゃあおれのものになってよ」