攫ってほしいと頼んでも ♔setters♔ ‐HQ‐
第2章 お転婆アリスを追いかけた迷いネコ
自分でもなんでか分からない
でも彼の何事にも諦めたような、冷めたような
その横顔が酷く心に引っ掛かった
「…何して」
『お弁当お願い!』
彼を置いて猫の駆けていった方向へ走る
さほど離れてない場所で猫はタオルを加えたまま木陰で休んでる
よし…このまま
すると猫はよほど用心深いのか、近付く私を見てあっという間に木の上に登っていく
『木の上とか…卑怯な…!』
私も負けず、木に足をかける
木登りなんて小学生のときにやって派手に落下した以来だよ。猫が佇んでいる幹にはあともう少し登らなきゃ届かない。木の表面が頬を掠め取って痛い
「…ハァハァ……ちょっ何やってんの」
横目でチラリと見ると先程の彼が私の置いていった弁当を両手に立っていた。走ったのか息を荒くして肩を上下させてる
「ていうか…どんだけ食べるのこれ」
『そ、それ私だけじゃないから!おつかいな…ヒャッ!!』
しがみついていた足が滑って体が勢いよく垂直に落下する
うそ…ヤバい…
目を瞑って衝撃に耐えようと体に力を入れる
体は痛みはそこまで来なくて少しの衝撃だけだった
恐る恐る目を開くと倒れた私の下に彼が仰向けで横たわっている
眉間にシワを寄せていて不満そうに口をへの字にさせている
『…ごめ…どうして』
「どうしてって、おれなんかが落ちてくる女子受け止められる訳ないじゃん」
『そういうことじゃなくて、なんで下にいるの…って意味で』
だって…
顔を上げて少し離れたとこに弁当が置いてあるのを確認する
わざわざ彼が私が落ちる直前に危ないのに下に来たことになる
「…ん…なんでって…
だからさっきから言ってんじゃん…
おれがアニメの主人公みたいに受け止めるのなんて無理だから」
『…もしかして…受け止めようとしてくれたの?』
「分かったならさっさと退いてよ、重い」
むぅ、ゴメンナサイ…
立ち上がって再び登ろうと木に手をかけたとき
「まって、何しようとしてるの」
『え、登ろうと…』
「…また落ちる気?」
ぐうの音も出ません…!!
一息吐いた彼は私の前に…というか木の下に当然のように屈んで見せる
『あの…これは…』
「肩車だよ、おれが下になるから乗って」
『うん…!失礼します!』
私は彼の頭にそっと足を跨がせて徐々に体重を預ける。ウッと漏らした声は聞かなかった事にする
