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【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)

第9章 ※偶然の再会


沙良がカタカタと震えているのがわかった。
涙はどんどん溢れ、止まる様子はない。

『帰りたくない…
私のこと誰も…知らない場所に…行きたい…』

「…………」



『ゃっぱり…頑張れない…
私に…価値なんて…きっとない……』


黙って話を聞きながら、沙良の口から出てきた言葉を頼りに仮説を立てる。

まず痴漢じゃない。それは良かった。

けど…沙良の体の痣が関係している。

誰に、どこで、何を言われたのかわからないが、少なくとも沙良をここまで弱らせるような言葉をぶつけた奴がいるってことだ。


ギリ…と奥歯に力が入る。

「お前は…」

肩を掴んだ手にも力が入り、呼吸を整えた。

「お前を必要だって言う人間の言葉より…
お前を攻撃する奴の言葉を信じるのか?」

『………』

涙は流れ続け、沙良の虚ろな表情は変わらない。


「お前に価値がないなんて言う奴の方が、俺にとっちゃよっぽど価値なんてないけどな…」

『…っ……』

しゃくりあげる沙良。



前にもこんなことがあったな…



「誰かにとってお前に価値がなくても、他の誰かにとったら、お前はめちゃくちゃ価値のある人間かもしれない。お前を必要としている誰かのために生きるんじゃ…
ダメなのか?」

『………ダメじゃ…ない。』

震える手が、俺の背中にそっと回された。

『梶…君は…私の事を…必要として…くれますか?』

「………」


当たり前だ。
俺の中でお前以外に欲しいものなんか、たかが知れているくらい…


そんな事もお前は知らないんだよな。


「…お前がいなきゃ皆困る。俺も…」

お前が笑ってくれるから俺達は勉強をはじめ、色んな事が頑張れる。

「お前が笑ってなきゃ心配になるし、お前を傷つける奴がいるなら…そいつをいっぺんぶっ飛ばさなきゃ気が収まらねぇ。」

体を離し、驚いた目で俺を見る沙良。


『…そんな事しちゃ…ダメですよ。』

「何でだ…お前を傷つけるのは良くて、そいつを傷つけるのがダメなんて、おかしいだろ?」

『体を傷つけちゃダメです…』

涙の止まった沙良をもう一度抱きしめた。



「人の心が目に見えたらいいのにな…
そしたらきっと、世の中から傷つく奴が減る…」

『…………』
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