第11章 幸村の影武者に怖いものなんてないさ
「毒の耐性をつける修行があるでしょ」
「ああ、俺もやった。少量の毒でも飲んでは動けなくなったな」
懐かしむかのように目を細めた幸村を同じ表情で見つめる佐助。
毒への耐性は、幸村たち武人とて例外ではない。暗器に塗られた毒は、些細な傷で命を奪う。
幸村に毒を飲ませたのも、毒に苛まれる幸村を世話したのも佐助だ。今よりもずっと幼い姿が苦しむたびに心を痛め、体が毒を制するまで付き添ったものだ。
だが過去を振り返るのはそこまでとばかりに、なおも幸村にロクでもない想いを込めている少女を睨みつけた。ひっくと小さな肩に震えが走る。
「こいつ」
佐助がこつりとうめを小突く。団子が喉に詰まったらしく、転がって苦しむが、幸村の視線は佐助に先を促す。
「毒に気づくと飲んだ振りしてこっそり捨ててやがったんだ」
「うめ。お主というヤツは」
座り姿勢のまま幸村が一歩引いてみせる。辛い修行ではあるが、自らの身を守るためにも欠かせぬものだ。それを嫌だと逃れるということはとても信じられないものだった。
「それに気づいた海六さんがおもしろが……深刻に考えてね。毒入りの菓子を作ったのよ」
「あやつは菓子も作れるのか」
幸村が感心したようにうなずく。
海六--真田十勇士がひとり海野六郎。医術だけでなく必要とあらば菓子もを作る男。
「それが効果てき面でね」
幸村がゴクリと喉を鳴らす。
「美味いのか」
「俺様は食べたことないけど。海六さんが言うには、毒込みで味付けしてるって」
「込み? 海六にも毒は効かないのか?」
佐助が首を横に振る。
「作るたびに、うめに食わせて反応を見ていたみたい」
「1回ではないのか……」
さらに幸村が一歩引く。毎回引っかかるうめが特殊なのか。毒入り菓子がよほど美味いのか。
どちらにしても死ぬ思いをしてまで食を極めんとするその姿勢は他に生かせないのか。
「そのせいで変な耐性がついたみたいで、どんだけ毒食わしてもあっけらかんとしてるんだわ」
くつくつと楽しい思い出を語るかのように佐助が続ける。
「こいつが食ってる様を見て、敵の忍びが思わす食って泡吹いてたなあ」