第11章 幸村の影武者に怖いものなんてないさ
幸せそうに眠るうめが幸村の呼吸に合わせて上下する。佐助の指がうめの頬に食い込むと、とたん眉間にしわが寄り険しい表情でギリギリと歯ぎしりする。
嬉々とした様子を隠そうともせずに次は何をしてやろうとうめを覗き込もうとするが、佐助の額を幸村が押した。
「巷で腹筋枕というのが流行っていると申してな。俺の腹筋で試して……」
「やっぱり不敬罪!」
幸村の力に一旦離れたものの、再び詰め寄る佐助。
「あーもー! なんだってそんな普通にこれを受け入れてるのさ! いつもの破廉恥はどうしたの!?」
「破廉恥? これは……そうなのか?」
目を白黒させ押し黙る幸村。猛将らしからぬ姿を一瞥した佐助は天を仰いだ。
佐助にしても幸村に対しては主以上お役目以上、忍びが決して持ってはいけない感情を向けてしまっている自覚はある。
だがこの今もまだ健やかに眠る少女。
無害なのはその一見だけで、中身は幸村の超超超…強火担。彼女の全ては幸村のためにあるといっても過言ではない。それだけならば、僕として完全無欠に使える駒となるが、その主愛は拗れに拗れて誰もが思わぬ方向に進んでしまっていた。
最初は密かに追跡したり、夜間警備と称した寝顔を盗み見たりする程度のいじらしいものだったが、次第に激化し、従者の役割を超えた付きまとい、褥に潜り込む、風呂を覗く、くずかごに入った書き損じの収集など佐助がドン引きする犯罪行為にまで発展したのである。
幸村にしても最初は声をあげて追い払っていたのだが、それも毎日のことになれば話は変わる。どんなに拒んでも、来る日も来る日も手を変え、侵入経路を開拓するうめに対し常人では決して不可能な慣れるという解決方法を導き出したのである。
今ではうめが何をしても、幸村はまあうめだからなあ。で済ましてしまう。
とはいえだ、主の腹筋を枕に昼間からうたた寝するなんて羨ましい……もとい、不届きを許すわけにはいかない。
「起きろ! うじ虫!」