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【戦国BSR】幸村の影武者の非日常的な日常集

第11章 幸村の影武者に怖いものなんてないさ


「入るよ」

返事は期待しない。短くかけた声と同時に足先を隙間に差し込む。

主の私室に入るにしては無礼千万の行為だが、片手に湯気が立ち上る湯呑の乗った盆、もう片手には山盛りの団子串。
主のために両の手が塞がっているのでしかたない。と、佐助は勝手に大罪に免罪符を付した。どうせいつものことだし、と。
すっと横に滑らせたつま先が道を作る。その先には、当然ある主の姿。だけではなかった。

「不敬罪」

短く罪名を告げると、いつもよりだいぶ下からの視線が佐助を貫く。

「こら、佐助。行儀が悪いぞ」

「いやいや、俺様よりそれでしょ! なんなのそれ!」

板の間に寝転がった主から視線を外さずに佐助のかかとが戸を引っかける。
そのまま引きこめば引き戸が横に滑り、殺し切れない勢いが強く柱に打ち付けた。耳をつんだくピシャリという甲高い音に幸村が顔をしかめる。

「静かにせぬか。起こしたら可哀想だろう」

佐助の嫌がらせもなんのその。主の腹を枕に小さく寝息をたてる妹分。

「可哀想って。あんたねー」

盆を置こうと膝を折った佐助を狙って、ずいっと伸びた手をピシャリと叩き落とす。

「さすがは俺の忍び。隙が無いな」

「旦那、行儀が悪いよ。団子が食べたければ、ちゃんと座りなさい」

「行儀の悪さならお主も同じであろう」

暗に先の足癖の悪さを咎めていたが、佐助はけろっとした顔を見せる。

「敬愛する主のために苦労したのですよ。障子くらい開けてくれてもいいじゃないんでしょうかね」

「よく言う。開けてもらおうなどという気は、端から無かったではないか」

体を起こせない幸村が佐助に。正確には佐助の持つ盆に再度手を伸ばす。
届くわけないでしょ。とあきれ顔の佐助が盆をあげれば、くぐもるような声が漏れる。

「……んふぅ。さすけ、うめあんこのお団子ねー」

「都合のいい寝言だこと」

「寝かせておいてやれ。疲れておるのだろう」

「って言われてもね、旦那。こいつが起きなきゃ団子食べられないでしょ」

これだけ騒いでいても、すやすやと寝息をたてている姿の胡散臭ささに佐助は渋い顔を向ける。

「寝たままでも食すことはできるぞ」

「はーい。そんなお行儀の悪いこと俺様が許しませーん」

「けちでござるな」

「けちで結構。さて、なんだってうじ虫を腹に乗ってけるのか話してくれるよね」
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