第6章 あの空の向こうで【五条悟・高専編】
「桜ちゃん、こっちとこっち、どっちがいい?」
ひとしきり遊び、傑は公園内にあった自販機で飲み物を2本買うと、桜に選ばせようと質問した。
「え……いいの?」
桜は目を輝かせて母親である雫の方をチラリと見ると、雫はクスッと笑い、頷いた。
『ありがとう…傑君。お金払うね。
桜、良かったね。初めて飲むもんね、そういうの…』
財布を出そうと、雫はブカブカのパンツのポケットに手を入れた。
「あ、ごめん。もしかして糖分とか、ちゃんと管理してる感じ?お茶の方がいいなら…」
傑が焦って薄い白色の飲み物を引っ込めた。お金はいいから、と言いながら。
『違うの、高いから…。ペットボトルなんて1度も買ったことなくて。桜嬉しいと思う。』
傑は遠慮がちに頷くと、キャップの蓋をゆるめて桜に渡した。
「じゃあ、雫ちゃんにはお茶ね。」
「つーか、はぁっ!?俺の分ねぇじゃん…」
「悟は自分で買いに行きな。私の分もよろしく。」
傑は桜の隣に座った。もう立ち上がらない、とでもいうように。
はいはい…
俺が3人に背を向け、自販機に向かおうとすると
「っ…雫ちゃん?」
傑の大きな声がした。
雫は青い顔をして苦しそうに胸を押さえている。
ペットボトルのお茶が鈍い音をたてて地面にぶつかり、コロコロと転がった。
『大…丈夫。よくこうなるの…家に薬あるから…』
つくり笑いをする雫の額からは大量の汗が流れている。
「本当?救急車呼ばなくていい?」
傑は桜の手をとると脈を測り、ポケットからハンカチを出すと雫の汗を拭った。
雫は頷くと
『ごめんね…しばらくこうしてれば…良く…なるから…』
震えながら、蚊の鳴く様な声で言った。
「桜、かあちゃん本当によくこうなるのか?
こういう時どうする?すぐ飲まなきゃいけない薬とか、あるのか?」
俺は桜に顔を近づけ、できるだけ平静を装って質問した。
桜は目に涙を溜めて、どうしたらいいかわからないという顔をして、懇願するように俺と傑を交互に見ている。
3歳じゃ無理もねぇよな…
すると、あ…と思い出したように目を見開いた。
「丸くて白いお薬飲むと、ママ元気になる。」
「そうなのか…?」