第6章 あの空の向こうで【五条悟・高専編】
『何で…今日会ったばかりなのに…
こんなに良くしてくれるの…?私達親子に…
私お金とか出せないよ…?何もできないよ…』
涙を拭う
雫ちゃんの肩を触り
引き寄せて
そっと抱きしめた。
『っ……』
「どうしてだろう。自分でもよくわからないんだけれど…雫ちゃんに、無理だけはしてほしくないって思ってる…桜ちゃんのためにも。何か困っているなら、何でも言ってほしい。」
今日、公園で初めて見た時から気になっていた。
君のことを知りたいと思った。
『………桜の…父親は…
桜がお腹にできたって分かってからいなくなって…ずっと会ってない…』
「うん…」
そんなに大事な話をしてくれるのだと、抱きしめる腕に力を込めた。
『実家にお世話になってたんだけど、私の人生は男に狂わされた、ってずっと両親に言われ続けて、遂には桜のせいだって言い出して…桜のために家…出たの…
今は事情があって仕事辞めてて、お金…そんなになくて…
夕ご飯も家で作ろうと思ってたからごめん…ハンバーガーのお金…』
「…………」
我慢の限界だった。
体を離し
綺麗な頬に手を添え
髪をよけると
そっと額に唇を寄せた。
『っ……傑…君…』
唇を重ねたい気持ちを、ギリギリの理性で保ちながら。
「お金なんていいから…君の側にいさせてくれないかな?
今日会ったばかりで胡散臭いよね。信用できないと思うけど、雫ちゃんが苦しんでいるのも、泣いているのも…
私はもう見たくないんだ。」
雫ちゃんの細い肩を抱きながら、気がつくとそう呟いていた。
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「ったく…何で俺が…」
ハンバーガーの袋が入ったビニール袋と、コンビニであれこれ買った袋を下げ、アパートまでの道を急ぐ。
"悟君っ……"
ドッジボールで同じチームになった俺にパスを回す雫の笑顔と、目を瞑って横になる、弱った雫の姿を思い出した。
思えばこの間見た時から苦手だった。
境遇が気の毒すぎて、何を言ったらいいかわからなかった。
けど、案外アイツを笑顔にできるのは簡単かもしれないと思った。
「起きてっかな…」
足を速めると、台所からもれる明かりが見え、更に急いだ。