第11章 Vivit Color@忍足侑士 ❦
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「紫雨と、申します」
わかりやすく緊張している振袖姿の彼女。
「忍足です。
こっちが倅の侑士です」
両親の視線に、侑士です、と向かいの見合い相手に頭を下げる。
主に話すのは互いの両親で、時折、母や父に話を振られて少し返事や会話とも言えない会話を交わしただけで、二人きり、庭に放り出された。
「侑士さんは、テニスを長くされていたとか」
「そうですね。
大学の後半には、時間取りづらなってしばらく離れとりましたが...
紫雨はんは、なんかされとったんですか?」
「私、運動はめっぽうダメで。
長く続けていることと言えば、お裁縫くらいでしょうか」
「ああ、洋裁が趣味やと言うてはりましたね」
「はい。
和裁も、祖母に習ったのですが、私にはとても難しくて...この振袖は、祖母が仕立ててくれたものなんです」
「どうりでよう似合うてはるわけや」
「あ、ありがとうございます」
少し俯いて照れ笑う彼女。
「あの、つかぬことをお聞きしますが、これまでお付き合いをされていた方とかは...?」
おずおずと見上げる視線。
「人並みに、ですかね」
「そ、そうですよね。
侑士さんほどの殿方なら、女性は放っておかないでしょうし...」
すみません、変なことを...と言う彼女。
「見合いの相手に、それも女性に聞くもんやないとは思いますけど...」
視線で、そちらは?と聞き返すと、えっと、と視線を泳がせる。
「あの、実は...」
もしやお付き合いしている人がいるんじゃ...?と見た彼女は、捕食者から隠れ場所を探す小動物のようだった。
「大変、お恥ずかしいのですが、その...ずっと女子校でしたから、殿方と...まともに話すことも、就職してからのことでっ」
(ガチの「お嬢様」やんか)
今時おるんやぁ、と目の前の彼女が急に、希少症例の患者のように見えてきた。
「怖ないですか?」
「え?」
「いや、男に耐性ないんやったら、今、初対面の男で二人て怖いんちゃうかな、て」
一つ、瞬きをして、いいえ!と頭を振る。
「とんでもないですっ
怖いだなんてっ!
慣れていないので、きちんとお話ができていないかもしれなくて、それは、申し訳ないです」
「あ、いや...そないなことないですよ」
よかった、と、初めて彼女のまともな笑顔を見た。
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