第11章 Vivit Color@忍足侑士 ❦
三和土で通勤靴を脱ぐと、おかえりなさい、とリビングに繋がる扉が開き、笑顔の妻が出迎えてくれる。
「あの、侑士さん」
「ん?」
鞄を受け取った紫雨は、お話が、と玄関を上がった自分を上目に見た。
「どないしたん?」
「あの、今日、病院に...」
「病院?」
なんやあったんか?と、柔らかな頬に手を添え、顔色を見る。
「ちぃと、貧血か?」
「さすがですね」
微笑んだ紫雨とリビングダイニングに向かい、ジャケットを脱ぐと、いつものように受け取って、それをハンガーにかけて鞄を定位置に置いた紫雨が、掛けたソファの隣に、こちら側に体を向けて座った。
彼女が膝に置いたのは、手帳ケースのようなもの。
「あの、これを」
ケースから取り出されて差し出されたものを受け取り、パッ、と妻を見る。
「3カ月になったばかりだそうです」
そう微笑んで、彼女の腹部に当てられた手に、そっ、と自分の手を重ねる。
「ほんまに?」
「はい。夏前には」
そうか、といつもと変わらないように見える腹を撫でる。
「体調は?つわり無いん?」
「それがさっぱりなくて。
これからなのか、無い体質なのか...?」
「無茶したらアカンで、ほんまに。
一人んからだや無いねんから」
おんねんから、と温かく感じる腹を何度も撫でる。
「お父さんですよー」
「どっちなんやろ?男か女か」
「まだ先生は、確定できない、と。
次か、その次の検診にはわかるみたいですよ」
「楽しみやな」
そう言った侑士に、はい、と頷く。
「そうだ、侑士さん、ウサギとクマとネコと...リス!どれが好きですか?」
「ウサギ、クマ、ネコ、リス...?
せやなぁ...ネコやろか」
「ネコですね」
「なんや?クイズなん?」
「ふふ、お楽しみです」
ねえ、とお腹に微笑みかける紫雨に、?と首を傾げる侑士だった。
✜
「ネコてこれやったんか」
リビングの脇に設置されたベビーベッド。
買い揃えたベビーグッズの中に、派手なビビッドカラーのネコのぬいぐるみが座っていた。
「ファーストトイとして作ってみました」
「色がわかるんは、生後3〜4ヶ月頃や言うからなぁ」
そう言って、侑士は臨月直前の紫雨の腹を撫でた。
end