第11章 Vivit Color@忍足侑士 ❦
「通話中」の画面には「澤田先輩」の文字。
-紫雨?どうしたぁ?-
聞いてるか?と聞く声に、侑士が目を細めた。
「さっ澤田先輩っ!
あのっ今日のお昼、声かけてくださって、ありがとうございましたっ」
-こちらこそっ!いやぁ、びっくりしたよ!
紫雨が結婚したなんて知らなかったからさぁ。
ほら、お前、SNSとかしてないじゃん?-
スピーカーモードの携帯から聞こえるカラッとした口調は、男と言うにはあまりに高い。
-あ、写真送ったけど、見た?-
「はい...あの、保存してもいいですか?」
-もちもち!
今度はゆっくりご飯でも食べながら話そうよっ
旦那のこととか、聞きたいしっ-
覚悟しとけよー、と言う後ろから、母ちゃーん!と甲高い声。
-え?ああ、わかったわかった。
紫雨?今日会えたの、マジ、嬉しかった!
予定合わせて会おうなっ-
「っはい!楽しみに、していますっ」
-ん!あ、旦那によろしくね!-
「はい、」
おやすみー!と通話が終わった携帯。
結婚式の前撮りの写真の待受画面に手を伸ばし、メッセージアプリを立ち上げる。
そう多くないトークルームのトップにピン留めされた『侑士』のルームのすぐ下のアカウントにバッジが付いた。
そのルームを開き、侑士さん、と携帯を見せる。
「見たのは、この方では、無いですか?」
くたりとしながら差し出された携帯の画面には、紫雨と共に映る人がいる写真。
確かに、見かけたその人に間違いない。
が、「母ちゃん」と呼ばれるには、あまりに、かっこいい雰囲気だ。
「澤田先輩は、演劇部、に、いらして...
身長が、侑士さんと、変わらないくらいある方なので...男性の役をよくされていてっん!...」
腰を引いた侑士に、ダイニングテーブルの傍らに座り込んだ紫雨は、テーブルの脚に掴まりながら、見上げた。
青ざめた顔で立ちすくむ侑士に手を伸ばす。
「侑士さん、」
戸惑いに視点が定まらない夫に微笑みかける。
「ぎゅっと、してくれ、ますか...?」
「...ええんか?」
「はい」
初めて見る、情けないというか弱々しい瞳。
「ごめんなさい」
「なして紫雨が謝るんや」
強く抱く腕の優しさに、彼の首筋へ頬ずりをした。
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