第23章 Amazing Grace
それから、なんだかご機嫌になってしまった智に引っ張られて、広い芝生の広場で歩行練習をした。
今まで少しは部屋で歩いてみてたんだけど、本格的に歩くのは久しぶりでなんだか足の裏が疲れて痛くなった。
だから、家に帰ってお風呂に入ったらぐっすり寝てしまった。
何も考えず無心に眠ったのは、久しぶりだったかもしれない。
とても、気持ちよかった。
「なんだか、いい顔するようになったな翔」
ある日、西島さんが俺の顔を見るなり、そんなことを言った。
「そうですか?最近、智が外に連れ出してくれて散歩するようになったから血行がよくなったんですかね」
「ふふ…まあ、それもあるんだろうがな」
そう言って、脈を取るのに俺の手首に触れた。
しばらく西島さんのいつも冷たい手が俺に触れていたが、急にぎゅっと握られた。
「…もうそろそろ、前の職場の連中に会ってみるか?」
「え……?」
「おまえの勤めていた病院にちょっと探りを入れてみたんだがな…まだおまえ、ちゃんと退職できてないらしいんだ。休職扱いになってる。この先、回復したら医者に戻るんだろ?だったら、そこをちゃんとしとかないと医局にも戻れないだろうし…」
どうする?と俺の目を覗き込んできた。
こんな西島さんは珍しい。
俺の先のことまで考えてのことなんだけど、どうしたらいいのか西島さん自身にも判断がつかないんだろう。