第23章 Amazing Grace
「…忘れちまえ」
「え?」
不意に聞こえた声は、少し掠れていた。
「そんな奴らのことなんか…忘れてしまえよ」
なんだか振り返ってはいけない気がして、そのまま空を見上げていた。
「そうだね。そうできたら、楽なんだろうね」
「だったら…」
「でもね、智」
ピタリと車椅子が止まった。
智は俺の言葉を待っているようだった。
「それも含めて、俺なんだなって思う」
そう。
あの過去があって、あの親があっての今の俺なんだ。
いまだ心が波立って仕方ない時もあるけど、智や今まで俺に関わってくれた人たち…
そして、能村さんたちのことも含めて──
今の俺なんだ。
「だから、忘れない」
「……そっか」
再び、車椅子がゆっくりと進み出した。
「忘れてなんか、やらない。そんなあいつらに都合のいいことなんてしてやるもんか」
そう言ったら、また車椅子が止まって。
「智…?」
振り返ろうとしたら、ぐしゃっと頭を鷲掴みにされた。
「えっ…」
そうかと思ったら、頭を激しく撫で回された。
「ちょっ…ちょっと、智っ…」
「いいぞ!いいぞ!翔、その調子だっ…」
泣き笑いみたいな智の声が聞こえて、俺も少し涙が滲んだ。
「も、もおっ!やめろよっ…!」
俺の声も、少し震えてたかもしれない。