第23章 Amazing Grace
そんな風に自分の親のこと言ったの、初めてだったかもしれない。
思春期の頃、教室で同級生たちとふざけて放った言葉ではなく。
本当に心底そう思って言った。
そのことを智に言うと、また変な顔をした。
「どうしたの?」
「いや…おまえ、反抗期ってなかったのかよ?」
「あ」
そういえば、西島さんにもそんなことを聞かれた気がする。
あのときはなんでそんなこと聞くんだろうって思ったけど…
「なかったんだよね」
「なかった?」
「うん…ひたすら、親にいい子に見られようとしてたんだ。だから逆らうことなんてできなかったよ」
ただ当時は、スマホで初めて知った世界の大人たちと遊ぶことに夢中だったのもある。
中には体だけが目的の男だっていた。
俺だってそれだけが目的だったときもあるから、おあいこだ。
でも思えば……俺は彼らに甘えて、反抗期をさせてもらっていたのかもしれない。
親にはできなかったから、俺の身体を通り過ぎていった数多くの男たちに反抗してたような気がする。
そして、彼らもまたそんな俺を受け入れていたように思う。
彼らの過去は、多分あの時の俺みたいだったろうから。
「あのね、智…」
「ん…?」
旧御涼亭を離れて、また遊歩道に戻った。
少し考え込んでしまったから、さっきの話が途中だったことに気づいた。