第23章 Amazing Grace
「…そんなことがあったのか…」
「もう十数年前の話なのにね。この前の地震で不意に思い出したんだよね」
今日は天気がいいから、車で出かけて新宿御苑の中をゆっくりと回っている。
西島さんが「新宿御苑はいいぞお」って言ってたから来てみてる。
ここは未舗装の箇所を除けば、ほぼ車椅子で行くことができる。
そういう所も散歩に適してるってことで、西島さんが激推してた。
「翔、そりゃあ…誰でもショックだと思うぜ?」
「え?」
「おまえが特別ショック受けてるんじゃなくってさ。あんな混乱状態のときに家に一人ってさ…そりゃお手伝いさんが居たとしてもだよ。あんな状況で一人にされたらショック受けて当たり前だろうが」
「そう…かな…?」
「そーだよ!逆になんでそれで親を恨まねえのか、不思議なくらいだって」
「……恨む……」
あのときは絶望はしても、不思議と親を憎く思うことはなかった。
「今だって…恨んでてもいいと思うくらいのことだと思う」
ふっと、幼い智がご両親に一生懸命「恨んでるんだぞ!」って言ってるところを想像して笑ってしまった。
「おい…なに笑ってんだよ」
「え?ううん…ふふ…」
今日の日差しは明るくて。
木々の隙間から漏れてる光が眩しいくらいだ。
あの日から、ずっと俺は自分と家族のことを考えてた。
とても苦しい作業だ。
毎日魘されて起きるくらいには。
「笑ってんじゃねえよ…」
車椅子を押す智がぼやいてる。
「……恨んでも、いいのかな……」