第23章 Amazing Grace
だって車椅子の乗る車なんて、補助金を使わないと高額になってしまう。
レンタルしたとは思えない。
公的機関だと手続きが煩わしいし、民間の業者でも公的な身分証明ができるものがないと貸してはくれない。
あまり顔を覚えられたくないだろうから、そういう場所には智は近寄らないだろうと思う。
ということは智が全額自腹で買ったとしか思えなくて、驚くのと同時に申し訳ない気持ちになった。
でも不思議なことに「俺なんかに」と思わなかった。
智の温かさを感じて「嬉しかった」。
誰が間違っていたのか──
理解してしまうと、体が楽になった。
それまで緊張してずっと歯を食いしばっていたような気がする。
今、生きてきて初めて、体を緩めてリラックスしているんじゃないだろうか。
ぼーっとする時間も増えた。
智とふたりでいるのに、何も喋らないでじっとしていることもあった。
無言が不安じゃない。
これは智とだけではなく、西島さんや稲垣さんと居てもそうだった。
これも初めてのことだった。
他の人と…それが例え家族でも、一緒にいると何か喋っていないと不安になっていた。
無言の時間が怖かった。
緊張や焦燥…
そういうものが、俺の生活から消え失せた。
それに気づいた瞬間、胸の奥がふっと軽くなって、少しだけ笑いそうになった。
新しい自分は、一体どんな自分になっていくんだろう。