第23章 Amazing Grace
「…そういえば昔、西島に言われたことがある」
「なに?」
ベッドの側の椅子に座り直すと、智の表情がわずかに引き締まった。
「おまえは家族がきちんと愛してくれたから、最終的にはちゃんと真正面から人を受け入れられるって」
少し息を吐き出して、それからまた俺を見た。
「きちんと愛されてこなかったヤツには、真正面から人を受け入れるってことは、とても勇気の要ることだって」
わかったような、わかってないような顔をした。
「翔、間違ってたらごめん。今の翔って、そういう感じなのか?」
「そういう…?」
「人を受け入れることが、難しい…?」
痛いところを、容赦なく突いてくる。
「…そう…」
きっと8年前に俺が話したことを、智はちゃんと覚えているんだ。
「そうだね、俺は…」
そう返事をしたきり、上手く言葉が出てこなくて黙り込んでしまった。
「ごめん。無理しなくていい」
「違う、無理はしてないんだ…ただ…」
さっき思い出したことが、まだ胸に刺さっていて。
まざまざとあの時の孤独を思い出してしまって。
「…俺は、ずっと独りだった」
ぽろり、伝えようとは思っていなかった言葉がこぼれた。
思ったままの事が無意識に言葉で出てしまったようだった。
「あ…あの…今のは…」
思わず智の顔を見たら、智は驚いていなかった。
「智…」
そのまま、俺の手を黙って握った。