第23章 Amazing Grace
もしも何もできなかったとしても、もしかしたらなにかできるかもしれない。
ただ聞くだけでも、智が救われるかもしれない。
「そうだなあ…いつか、言えると思う」
「翔…」
「西島さんの治療を受けてると、実は家族にあんなことやこんなことされて俺はショックを受けてたんだって、思い出すことが多くてさ…」
そう言ったら、智は少しだけ変な顔をした。
智にはわからないかもしれない。
あんなに愛に満ちた家庭で育った智には、経験のないことなんだろう。
俺の家族のことなんか、8年前に少し伝えたけども、智には想像することは難しい気がする。
「その思い出したことを自分の中で少し整理する必要があるように思うんだ。智にちゃんと伝えられるように」
「それは翔にとって、難しいこと?」
ちょっとだけ潤んだような目で智は俺のこと見てる。
「まあ、そうだな…難しいっちゃ難しいけど…」
「けど?」
「できないことはないと思う。だから、待ってて欲しい」
そう言うと智はちょっと考え込んだけど、すぐに俺にグータッチを求めてきた。
タッチすると満足そうに笑う。
「なら、待ってるから」
「うん」
「言いたくなくなってもいいから、それでも待ってる」
「そんなことしないよ」
笑って言うと、智は安心したように笑った。