第23章 Amazing Grace
また少し、部屋が揺れた。
余震だろうか。
どこかで大きな地震があったんだろうか。
あの時みたいな……
あれは東日本大震災が起こったときだ。
あの頃俺は中等部の学生だった。
中等部の校舎は三田キャンパスと女子高等学校に挟まれた敷地にある。
その日はテストのため早く授業が終わって、ちょうど家に帰るときだった。
地下鉄の駅の構内に入ったところで、大きな揺れと共に聞いたこともないような轟音が周囲に響いたのをよく覚えている。
それまで震度4くらいは度々あったので、最初のグラリとした揺れで「またいつもの地震か」と思ったのが甘かった。
生まれてから、経験したことのない大きな揺れだった。
その場で同級生たちと共にしゃがみ込んで揺れが収まるのを待った。
地下だし一瞬もうダメかと思ったが、揺れが収まってすぐに駅員に案内され、階段で地上に避難することができた。
そこからが大変だった。
家に帰ろうにも地下鉄もなにもかも止まってしまった。
信号が一部止まっているとのことで大渋滞が起こっていて、タクシーすらも捕まらなかった。
でも不幸中の幸いなことにあの当時の実家は同じ港区の海の近くにあったから、たくさんの帰宅難民の大人たちと一緒にひたすら歩いて家に帰ることにした。
携帯電話は電波がなくて、つながらなかった。
途中、公衆電話があったが大行列だったので、並ぶのを諦めた。
連絡ができないことで、家族が自分のことを心配しているのではないか。
一刻も早く実家へ戻らねば──そう思って、急ぎ足で人波の海を歩いた。