第23章 Amazing Grace
「ああ、悪かったよ」
西島さんは智に向かって言いながらも、俺の顔を見て少しシニカルに笑った。
「ぜんぜん悪かったって思ってねえだろ」
智は拗ねてしまったようで、部屋の隅に置いてある丸椅子に座って、足を投げ出して背中を向けてしまった。
「さっきの続き…するか?」
西島さんが少しトーンを落とした声で聞いてきた。
さっきの…話…
少し、怖い気がした。
「わかった。無理はするな。また来るから、その時話そう」
「…はい…」
「ただし、一人で抱え込みすぎるなよ?」
「え?」
「そういう傾向があるからな。もしも考えたいときは、隅で拗ねてるやつにでも向かって独り言を言っとけ」
西島さんらしい言い方で、自然と智を巻き込む形を作ってしまった。
「…ふふ…」
隅で拗ねてるやつはこっちを見て、ぶうっと頬を膨らませて見せた。
「30超えてるやつがあんなことしてるぞ、翔」
智を見ていた西島さんは愉快に笑った。
それを見て、ますます智は頬を膨らませた。
「ちょっとだけ俺可愛いとか思ってんだぞ、アレ」
極小さな声でそんなことを西島さんが囁いて。
「ぶふぉっ…」
思わず吹き出した俺はむせてしまって、しばらく咳が止まらなかった。