第23章 Amazing Grace
「…俺も、そうだったよ」
西島さんがぽつりと言った。
さっきと違って自信に満ち溢れた声じゃなく。
その瞳もどこか寂しそうに揺らめいていた。
初めて見る表情だった。
「完璧じゃないと、価値なんてないって…そう思ってた。生まれたときから間違っているくせにな」
苦笑いをしながら、少し体を起こして窓の外を見た。
俺も釣られて窓の外を見る。
外は冬の気温が緩んできて、もう春になろうとしている。
「生まれたときから…?」
「そう。俺は生まれながらの同性愛者だ。もう母親の腹の中で決まってたんだろうな」
俺も、そうだった。
気がついたら恋愛対象は男で。
それが異常なことだって気づいたのは学校に上がった頃だった。
それより随分前から、母親からそれをキツく戒められていた。
少しでも出そうとすれば体罰が待っていたくらいだった。
その母親の表情を、未だに夢に見ることがある。
何かを怖がっているような、歪んだ顔──
「生まれ出た時から間違っていたからこそ、完璧を追い求めた。……だから俺は精神科医になってしまったのかもな」
「そう、だったんですか」
どう答えていいのかわからなくて……
環境が似すぎていて胸に来るものがあるのに、随分間抜けな返答になってしまった。