第23章 Amazing Grace
それは…俺の体のことを言っているようでいて、俺の人生のことを言っているようでもあった。
「でも…完璧じゃないことに、価値はあるんですか…」
思わず──
本当に思わず口をついて出た言葉は、自分で吐き出した言葉なのに俺の心に突き刺さった。
「完璧なものって、なんだ?」
「え?」
動揺したまま、西島さんの言った言葉の意味が咄嗟に飲み込めなかった。
「世の中に、どれほど完璧なものってあるんだろうな?」
「……」
思わず握りしめた手に浮かぶ血管が目に入った。
この血管だって教科書通りに張っている人なんていなくて。
主要な血管はここを通っていますよという目安で教科書に描かれているに過ぎない。
人によって、複雑に動脈も静脈も入り乱れて体の中に河川のように張り巡らされている。
そのどれも同じものはない。
一卵性の双子でさえも違ってくるものだ。
完璧な血管モデルなんて、いないし存在なんてするはずもない。
「翔。あんたの人生が100%完璧じゃなかったからって、あんたになんの価値もないって、そう思ってんのか?」
そんなことは──ないと、思いたい。
じりっと胃を掴まれるような不快感が登ってくる。
そうじゃない。
そんなことはない。
完璧じゃなくたって……価値がないなんて…
なんで俺はそんなことを思ってるんだ?