第23章 Amazing Grace
内科領域は、稲垣医師に。
精神科領域は、西島さんに世話になってる。
やっと最近、この人たちが現実に存在する人なんだって認識ができるようになってきた。
それだけ、頭が働くようになったというか。
回復してきてるってことなんだと思う。
幻想と現実の間を彷徨うことは、少なくなってきた。
部屋の隅の影が能村さんに見えることは、まだある。
でも、それが幻想だとすぐに気づけるようになった。
西島さんはカウンセリングや行動療法なんかも手掛けていて、もう医師じゃないのに今有効と言われている理論にも詳しく、それを駆使して俺を生かそうとしてくれている感じがする。
多分、智にも同じようなことをしているんだろうと思う。
本当にこの人は優秀な精神科医だったんだと、元医者の患者として接してみて思う。
稲垣さんは開業医だけど、最新の論文にも詳しいし地域医療に掛ける気持ちは熱い。
なにより医師としてのプライドを、俺に思い出させてくれるような眼差しを患者に向け続けている。
俺に対しての眼差しは、ときに突き刺さるようでいて温かだった。
この二人の優秀な医師が、患者のことでこうなってしまった俺のこと、どう見てるのかわからない。
でもどう思われてても……
智と一緒に生きていくって決めたから。
だから、いい。
今は、そんなこと考えない。