第22章 1 John 1:9
「取ってきたぞ」
そんなことを思いながら座っていたら、智が戻ってきた。
「すぐわかった?」
「ああ。あそこは翔が整理したんじゃないだろ?」
「そんなことないもん」
「家政婦さんが整理してくれたんだろ?」
「…ハイ…」
なんですぐバレるんだろう。
「髪型、どんなになっても文句言うなよ?」
「いいよ…どうせどこも行かないし…」
「まあ、失敗したら切りに行けばいいしな。なんだっけほら、出張美容師みたいなのとかもあるんだろ?」
それは8年前、俺が智に言ったことだった。
「…俺が言ったこと、よく覚えてるね」
「そりゃ…覚えてるさ」
言ってから、ぐしゃっと俺の頭を撫でた。
「8年も前のことなのに、よく覚えてるね」
「8年も前のことなのに、よく俺のこと覚えてたな」
真面目な顔をしてそんな事を言う。
「そりゃ…智のことは忘れるわけない…」
「へえ?なんで?」
「智は?」
「え?」
「俺のこと、よく覚えてたね?」
そう混ぜっ返すと、智は苦笑いした。
「忘れた忘れた」
そう言って、バリカンを取り出した。
「じゃ、始めるからな」
「よろしくお願いします」
「覚悟しろよ?」
そんな大げさなって思ったけど…
本当に覚悟が必要だったことを、このときの俺はまだ知らなかった。