第22章 1 John 1:9
「おー…スッキリした…」
二人で洗面所の鏡で俺の顔を見ている。
大量に剃った髭が床に落ちている。
こんなに髭が俺の顎にくっついていたなんて、不思議だった。
「翔の顔だ」
「ふ…髭があったって俺の顔でしょうよ」
「違うな…」
「何が違うの?」
「なんか知らないおっさんみたいだった」
「おっさん…」
俺、まだ30歳になってないですけど。
「随分老けたじゃねえか」
「そう…?」
まじまじと鏡の中の自分を見つめると、確かに老けた気はする。
食べられるようになったとは言え、まだまだ顔の肉はげっそりと削げ落ちたようになってるし。髪の毛だって伸ばし放題だったから、バサバサのボウボウだ。
「髪の毛切ろうかな…」
「俺が切ってやろうか?」
智のその言葉に、頭の中のシナプスがひとつ繋がった。
「バリカン…まだあるよ?」
「え?」
「智のために買った、髪の毛を切るためのバリカン。まだ取ってある」
そう、捨てられるわけがない。
智はあの日、何も持たずに俺の部屋から消えた。
最初に身に着けていたもの以外、なにも持ち出してない。
だから智のために通販で買ったあのバリカンは、俺の部屋にしまってあった。