第22章 1 John 1:9
俺がこんな状態になってしまったのは、能村さん一家が亡くなってしまった夏からだと思う。
自分ではどうすることもできなかった。
訃報を伝え聞いても信じられなかった。
テレビでニュースを見ても、つくり物の世界にいるみたいで、どうしても現実だって思えなかった。
でもある日…
3つの骨壺を持った”別れた旦那さん”という人が、職場に挨拶に来た。
それを見た瞬間、もうだめだった──
俺が…
俺が殺したんだ
人を殺したんだ
それから潤は毎日のように来てくれていたけど…
うちの家族は舞が二週に一回来るかどうかだったと思う。
舞も今は家族を持っているし、幼い子どもも居る。
来られないときは修が学校帰りに来てくれていたように記憶してる。
父と母は、覚えてる限り一度も来ていない。
桜井総合病院の精神科に入院することを固辞してからは、連絡すらない。
言うことを聞かない、しかも人間としての道から脱落してしまった長男なんか知るかってことだと思う。
「なんで謝ってんだよ」
潤は涙目になりながらも笑って俺を見上げた。
「なんだよ。せっかく風呂に入ったんなら、髭剃らなくてよかったの?」
「そんな余力なかった…」
「しょうがねえな。剃ってやろうか?」
「いや…いい。毎日剃られるかわからないし、しばらくこのままにしておく」
「そっか。じゃあ、髪の毛乾かしてやるよ」
嬉しそうに潤は立ち上がると、ドライヤーを取ってきた。
まるで我が家のように、淀みない動作だ。
ああ…
確か夏以降、なにもできなくなってしまった俺を急き立てて風呂に入れてくれてたな。
なんとか体を洗って出てきたら、こうやって髪を乾かしてくれて…