第22章 1 John 1:9
「同じ嗜好…ね」
意味深に呟くと、西島さんはベッドに投げ出していたジャケットのポケットからネクタイを取り出した。ワイシャツの首に引っ掛けると、ネクタイを結び始めた。
「いきなり俺のご機嫌取ろうとしたようだが、無理しなくていい」
機嫌を取る…?
ああ、医師として優秀だったって言ったことが、西島さんにはそう感じるんだろうか。
智のこと見たら、少し困ってるのか眉をハの字に下げている。
「機嫌を取ろうだなんて思ってませんよ…」
「まあ、そう答えるしかないだろうな」
ネクタイを結び終えると、智を見上げた。
「俺は今日はとにかく帰るから。次、来れそうな日がわかったら連絡する。それまでは普通に生活をしておいてくれ」
西島さんは俺のことを正面から見据えた。
「あんたもな。今は体を元に戻すことを優先させて…」
そう言うと立ち上がってジャケットを羽織った。
上質な仕立てのジャケットだった。
ネクタイもワイシャツも良いものだと感じた。
でも一般の医師のような雰囲気のものではなく、やっぱりその道の人が好みそうなデザインだった。
本当に、ヤクザなんだな…
「本当は余計なことも考えないで居られたらいいんだがな」
それは多分、無理だ。
だって、能村さんはそこにいる──