第21章 Psalm 121:1-3
くっくっくと楽しそうに西島は笑っている。
「お手柔らかに頼むよ…」
「まあ、櫻井翔次第だな」
またひとつタバコを吸うと、ゆっくりと紫煙を吐き出した。
「アンタは…」
「ん?」
煙を吐き終わると、俺の方へ顔を向けた。
「初めて人を殺したときは、どうだった?」
「俺?」
ボリボリと頭を掻くと、遠くへ目を向けた。
またひとつ、タバコを吸い込むと灰皿代わりの皿にもみ消した。
「まあ、一晩くらいは眠れなかったな」
「へえ…」
「智はどうだったんだよ?」
「何も感じなかった」
怪訝な顔で、西島は俺を見た。
「ちっとも?」
「ああ、ちっとも。…でも」
「でも?」
「翔に出会った8年前…」
「ああ、あの時か」
「うん。あの日は気を失うほど恐ろしかった」
そう言うと西島は俺から目を逸らした。
「そうか」
「うん」
今でも、本当は怖くてしょうがない。
人を一人殺すたびに、俺の夢に出てくる幽霊の数は増えていく。
でももう俺にはこれしかないし、この世界でしか生きていくことができない。
この悪夢が終わるときは、俺が死ぬときだと思ってる。
「もしかしたら、櫻井翔は殺しちまったって思ってるのかもなあ…」