第21章 Psalm 121:1-3
西島が帰ってからも、その言葉が頭から離れなかった。
患者を死なせてしまったのではなく、殺してしまったと思い込んでるんじゃないか──
死なせてしまうことは、医師にとって宿命的なことだと思う。
そうならないために必死に治療をするのが医師というものだろう。
なのにあんな状態になったということは、それ以外に何かが起こったということじゃないか?
「翔…?」
寝室で横になり寝顔を眺めていたら、一筋の涙が翔の目から溢れていくのが見えた。
「ごめん…なさい…」
静かに一言呟くと、翔の涙は止まった。
そっと涙を拭うと翔は目を開けた。
「ごめんなさいっ…ごめんなさいっ…」
飛び起きると、ベッドから落ちた。
「翔!?」
「ごめんなさいっ…ごめんなさいっ…」
翔は床で頭を抱えて蹲っている。
「翔、どうしたんだよ!?」
俺もベッドから降りて翔の肩を掴むと、跳ね除けられた。
「能村さんっ…ごめんなさいっ…ごめんなさいっ…」
「ノウムラ?」
「そんなつもりじゃなかったっ…俺はそんなつもりじゃっ…」
泣きながら後退りしていき、ソファベッドで止まった。
「ノウムラって誰だよ?翔」
何も聞くまいとおもっていたのに、取り乱す姿をみていたら思わず聞いてしまった。
翔は怯えた様子で、ソファベッドにしがみついた。
はらはらと涙を流しながら、目を閉じた。
「俺が…殺した…」