第21章 Psalm 121:1-3
少しだけ咀嚼して、ごくんと飲み込んだ。
その顔は少しびっくりしたものになってた。
「どうした?」
「…おいしい…」
「だろ?我ながら上手くできた」
「かーちゃんの…味?」
小首をかしげて俺の顔を見る。
その目にはなんの裏もなく、ただ純粋に俺のこと知りたいという気持ちだけが見えた。
「そうだな。かーちゃんの味に近いと思う」
「ふうん…」
嬉しそうに、翔はパンを少し崩してスプーンで掬い上げた。
そのままスプーンを見つめて止まっている。
「無理しなくてもいいぞ。食べれないならスープだけでも…」
「ううん。食べる…食べるよ…」
口に運ぶと、じんわりと笑顔になる。
「おいしいね、智…」
「ああ」
なぜだか、その笑顔を見てたら泣きそうになった。
「智のかーちゃん、料理が上手なんだね」
「そうか?普通の母ちゃんだったけどな」
「うちの母さんはこんな料理作ってくれたことなんてないよ」
「え…?」
「小さい頃から…うちにはお手伝いさんがいたから、母さんの料理なんてあまり食べたことないんだ」
「そっか…お手伝いさん…」
「うん…母さんは父さんと一緒に病院で働いてたから…」
そう言う顔には、なんの感情もなくて。
「嘘…」
また翔はスプーンでパンを崩すと、口に運んだ。
咀嚼して飲みこむと、器を見たまま止まってしまった。