第21章 Psalm 121:1-3
「でも先輩、念の為MRIやCTは撮って内科で検討しておいてくださいよ。あと栄養管理も…」
「わかってる。それは追々やっていくつもりだ。まずは身体状態を上げて、こんな状態から脱することを目指すよ」
「そうですね。そこはもう先輩の専門分野だから僕がとやかく言うことじゃありませんでした…」
二人は目を合わせると少し笑った。
「…懐かしいな。こんな時間におまえの顔見てると、ゼミの奴らと徹夜で症例検討したのを思い出す」
「僕、体力がないから、もうあんなことできませんがね…総合病院勤務ですらギブアップしたくらいですから」
確かに稲垣医師は体の線が細くて、ちょっと押したら倒れそうな感じだった。
医者って体力勝負だって前に翔が言ってたけど、この人はそういう勝負を降りたから、昼間しかやってない個人医院をやっているんだろう。
「そんな体力がないのに、悪かったな。こんな夜中になってしまった」
西島がいたずらっぽく笑って言うと、稲垣医師はにっこり笑った。
「いえいえそんな。西島先輩に頼ってもらって嬉しかったですよ!ただ、もうちょっと早く、今日来るって教えて貰えたら嬉しいですけどね」
「悪かったよ。急を要すると思ったんだ」
「わかってますって」
ふふっと笑うと、稲垣医師はコーヒーを飲み干した。
「さあ、早く帰って患者さんを休ませてあげてください」