第21章 Psalm 121:1-3
「ゆ…め…?」
翔は微笑んで俺に手を伸ばしてきた。
俺の頬を包む手は冷たい。
「ああ…いい…ゆ、めだなあ…」
掠れた声は小さくて聞き取りづらかったけど、しっかりと意味が伝わってきた。
「翔っ…」
その冷たい手で頬を包まれて、何も考えられなくなった。
「どうしたんだよ…何があったんだよっ…」
強く、夢に見たほど強く抱きしめた。
「…くるし…」
声が聞こえて、我に返った。
「ごめんっ」
慌てて体を離した。
「や…」
か細い声が聞こえたかと思うと、翔は起き上がって俺の腕を掴んだ。
「やだっいかないでっ…」
でもその手には力が入っていない。
いや、力をいれることができないんだろう。
だって、翔の腕は細くて…
最後に会った20歳のころよりも細くて。
「いかないで…ゆ、めなんだから…いかないでよ…」
縋り付くように俺を見上げたその顔は、あの頃よりも大人びているような気がした。
「翔…」
腕を掴んでいた手を取りぎゅっと握ると、やっと安心したように表情が緩んだ。
「さと、し…もう…どこにもいかないで…」
今にも泣き出しそうな顔をしながらも、微笑んでいる。
「……いかないよ」
そう答えるしか、ない気がした。