第20章 Romans5:3-4
外に出て、サンダルを引っ掛けてベランダの端まで歩いてみた。
突き当りにある仕切り板は緊急避難用に蹴破れるものになっていて、上の部分が大きく空いている。
8年前に和也が翔の部屋に忍び込んできたときは、ベランダの柵に登ってこの仕切り板の上を通っていた。
後ろを振り返って反対側の仕切り板の上を見てみたら、頑丈な網のようなものが張ってあって行き来ができないようになっていた。
雅紀か松岡のじいさんの仕業だろう。
ベランダから身を乗り出して翔の部屋の方を見てみる。
カーテン越しの淡いリビングの明かりが、かろうじて見えた。
なぜかほっとした。
「あ…」
視線を移すと、あの白いテーブルと椅子のセットらしきものがある。
「翔……」
たまらなくなった。
あの時よりもくたびれた感じに見える。
もう買い替えていてもおかしくないのに。
まだ翔は捨てていないんだ。
夜空を見上げてふたりで絶対に来ない未来の話をした、あの日の思い出を。
暫く様子を見ていたけど、部屋の中までは伺うことはできない。
部屋に戻って、少し気持ちを落ち着けた。
幸いキッチンにはコーヒーメーカーがあった。
豆まではないだろうと思っていたが、冷凍庫に挽いた豆が保存してあった。
冷凍してあるから、品質には問題ないようだった。
コーヒーメーカーに水と粉をセットして、暫く窓から外を眺めた。