第20章 Romans5:3-4
エレベーターに乗り込んで、21の数字を押す。
モーター音も聞こえない清掃の行き届いた室内はクラッシック調の音楽が流れていた。
いかにも金持ちの住む物件だと感じた。
21階に到着してエレベーターホールを出る。
「……」
足が止まってしまった。
右に行けばいいか左に行けばいいか、わからなくなって。
やっぱりあの時一度だけ通っただけだから、記憶が曖昧で。
もしかしてあれから共用部のリフォームでもしたのかもしれない。
それほどこの景色に見覚えがなかった。
それもそうか。
あれから何年経ったか…
「あー」
つい最近自分は36歳になった。
ということは、あれから8年も経過したことになる。
「8年か…」
それほど早く過ぎたとは感じないが、それでも翔との記憶は鮮明なのにそんなに時間が経っていたかと驚く自分もいる。
いつまでもエレベーターホールにいたら怪しまれる。
部屋番号を頼りに歩を進めた。
「あった」
自分が入るべき扉の前までなんとかたどり着いた。
隣の部屋の扉を見る。
同じ無機質な扉がただそこにあるだけだった。
「…翔…」
でも、そこには翔がいる。
さっき松本潤が出ていったから、間違いなく部屋の中に居るはずだ。