第14章 1 Corinthians 13:4
負債もなく経営の経験不足という理由の穏やかな売却だったから、当然資産や売却益が残っているはずだった。
しかしそれを相続した者が、親戚にいないのではないかという推測をぶち上げていた。
取材をしたら、少なくとも事件後に社長を務めていた親戚には入っていないということだった。
社長に就任したときから、利益は殆ど出ておらず売却益も大したものにならず、売却を期に退職する者の退職金に使われたと聞いているという。
そしてもっと不可解なことに。
智の両親の保有していた個人資産も消えているのではないかということだった。
これも相続した者が見当たらないという。
前出の元社長は、これも殆どないものと思い込んでいたというではないか。
一家3人が亡くなった火災時に、周辺の家屋にも少し被害が出てその保障に使ってしまったと聞いていたという。
これを書いた記者は『これは不可解なことであるから引き続き調査をする』と記事を結んでいる。
「潤…これ…」
顔を見ると、真剣な顔をしている。
「この記事を書いた人のこと、調べたよ」
「ああ、話し聞けたのか?」
「この雑誌はもう廃刊してるし、出版社ももうないからさ。すごく調べるのに手間取ったんだけど…」
トントンと机を指で叩くと、考え込む顔になった。
「…どうしたんだよ?」
ちらりと俺の顔を見た。
「事故死してる」
「え?事故…?」
「この記事が世の中に出る、ちょっと前だ」
目を逸らすとパソコンを操作した。
切り替わった画像を見たら、小さな新聞の記事だった。
「ひきにげ…」
そこには25歳の男性の名前とひき逃げ事件であるという内容が書いてあった。
警察は事件と事故の両方の可能性を調べているということだった。
「犯人はまだ捕まっていない」
「えっ」