第14章 1 Corinthians 13:4
潤はいよいよ俺を誂おうと面白がってる顔をしたけど、不思議とそれを避けようという気にもならなかった。
「なになに?初恋なわけ、櫻井さん?」
手をマイクを持ってるみたいにして、こっちに差し出してくる。
「初恋…?」
その語感は、未知の響きだった。
「初恋って、どういうのを言うんだ?」
「え?」
逆質問をしたら、潤は面食らった顔をして黙った。
「確かに、今まで好きって思う人はいたし、寝たけどさ…初恋って思ったことがないんだよね。…初めて好きになった人が初恋っていうんだろうけど、俺はそれに該当する人が思い浮かばないんだ」
「まあ…そういう人もいるんだろうけど…」
もごもごと歯切れの悪い返事が返ってきたから具体例を出してみた。
「喉から手が出るほど、その人の気持ちが欲しいっていうのは、違うでしょ?」
「んー…それはただのオナニーだな。自己愛に近いんじゃない?」
「その人を監禁して俺だけのものにしたいっていうのも違うでしょ?」
「犯罪でしょそれ。そういうのは恋って言わない。相手のことが好きなんじゃなくて、自分のことが好きなだけ」
「じゃあ、初恋ってなんだろ…?」
潤はうーんと悩んでから、腕を頭の後ろで組んで天井を見上げた。
「アンタ今までの経験でそれ言ってんの?」
「んなわけねえだろ。実体験だったら今ここにいねえよ。例えだよ、例え」
「だよな…」