第14章 1 Corinthians 13:4
「おかしいな。なんで腹が減るんだろ」
ぶふぉっと盛大に智は吹き出した。
「ねえ…つばかかった…」
「す、すまん…でもおまえそれ…」
「なんだよお」
だって異世界だからお腹なんて減らないと思ったのに。
「朝食べてからなんにも食べてないから、腹減るだろ。おまえ20代男子だろ?」
「ええ…モリモリ男子ですけどなにか?」
「なんだ?まだ寝ぼけてるのか?」
ぎゅうっと鼻を摘まれて、痛くて涙が出た。
「なにこれ…現実?」
「ああん?やっぱ寝ボケてたんだな?」
「ええ…?」
じゃああの甘い智も現実?
このオレンジ色の風景も現実?
「すごい…世界は美しい」
「え?」
今までくすんで見えていた世界が、一気に色鮮やかに。
まるで違う世界にきてしまったかのような色彩を帯びた。
これが、現実なんだ。
智と思いの通じ合った後の世界なんだ。
…とても、綺麗…
「…ううん、なんでもない」
智には言えないと思った。
今までなんで生きていたのかわからない俺の、つまらない人生に彩りが加わったなんて話。
とてもじゃないけど傷だらけの智にはできない。
智も俺と同じだったらいいなとは思うけど。
怖くてそれを確認することはできなかった。
俺と違ったら、怖い。
智の世界が、変わっていなかったら怖いから。