第7章 *File7.*諸伏 高明*
「…気持ちイイ~」
「ふっ」
ご機嫌ではしゃいでいる、幼子のような様子が少し続き。
「ん?ってか、一体此処は何処っ?!」
ふと我に返ったのか、身体をはね起こして、頭をブンブンと振りながら、周囲を見回す。
「私の家ですよ」
「ま、まさか。そ、そのイケボは…」
イケボ?
ギィィと機械音がしそうなほどのぎこちなさで、ゆっくりと青ざめた顔が振り返る。
「何か問題ありますか?」
「い、イヤー!!お疲れのところ、また夜遅くに大変ご迷惑をお掛けして、大変申し訳ございませんでした!私は今直ぐに退散しますから!お布団のカバーは洗濯してお返しします!!」
「全くアナタって方は…少し落ち着きなさい」
で。
明らかに拒否を表すその力むほどのイヤとは、一体どういう意味ですか?
あわわとすっかりパニックになりながらも深々と頭を下げた後、急いでベッドから降りようとするので、傍に寄るとポンポンと頭を撫でた。
「ほえ?」
「眠っているアナタの家に入るのを私が躊躇ったのと、余りにも気持ち良さそうに眠っているアナタを起こすのが忍びなかったものですから、私の勝手な判断でウチに運びました」
「す、すみません」
「ですから、迷惑だなんて少しも思っていませんよ。ただまあ…」
しゅんと垂れた頭から、視線だけがこちらを向いた。
「?」
「この布団をとても気に入っていただけたようで、安心しました」
「みっ、見てたんですかっ?」
「ええ、ばっちり」
「…最悪」
「何故です?私には、無邪気にはしゃぐアナタがとても可愛いと思えたのですが」
「か、可愛い?」
ガックリと落胆したまま眉を寄せ、何度か瞬きをする。
「はい。雪乃、アナタがです」
「…なん、で?」
「ずっとそう名前で呼びたかった。と言ったら、どうしますか?」
教育係だったとは言え、出会った頃から当たり前のようにアナタを名前で呼ぶ敢助君には、正直嫉妬していましたよ。
一線を引いた私とは違う、お互い遠慮のない、まるで兄妹のようなアナタ達の関係にも。
「……」
ベッドの上にペタリと座ったまま、私を見上げるその瞳は困惑しかない。
「雪乃」
「はい」
「アナタが好きです」
「は……いっ??」
「フッ。百面相ですか」
「へっ?」
瞳が大きく見開かれたかと思えば、次の瞬間にはキョトンとなる。
