第2章 全てはここから。
藤の花の家紋の家。
任務へ向かう前、飛羽は縁側で日輪刀を眺めていた。
透明な峰。
そして、波打つような透き通った緑色の刃。
「……いやぁ、綺麗だねぇ」
「何を呑気に眺めてやがる」
背後から低い声。
振り返れば、腕を組んだ蛍が立っていた。
「兄貴、まだいたの?」
「誰のせいで帰れねぇと思ってる!」
「はいはい。妹が心配なんですねぇ」
「茶化すな!!」
飛羽はケラケラ笑いながら刀を掲げる。
「でもさ、これ本当に綺麗じゃない?」
蛍も刀身を覗き込む。
「……ああ。峰は完全に透明。刃先だけ緑が波打ってやがる」
周囲の人々も珍しそうに見つめている。
「こんな色の日輪刀、見たことがない……」
「だろ?」
飛羽は得意げに笑う。
「世界に一本ってことで、大事にしてよねぇ」
「お前が使うんだろうが!」
「そうとも言う」
「そうとしか言わん!!」
蛍が頭を抱える。
「……本当にお前は昔から変わらねぇな」
「何それ。褒めてる?」
「褒めてねぇ」
「じゃあ酒一本奢って」
「なんでそうなる!!」
飛羽は楽しそうに笑った。
そのとき、鎹鴉が飛んでくる。
「カァ! 任務! 任務!」
「お、来たか」
飛羽は立ち上がり、刀を腰に差す。
蛍の表情が少しだけ曇った。
「……気をつけろよ」
「分かってるって」
「絶対に無茶するな」
「それは……努力する」
「努力じゃねぇ!!」
「はいはい。帰ってきたら酒付き合ってよ、兄貴」
「……ったく」
蛍は呆れながらも、小さく笑った。
「無事に帰ってきたらな」
「約束ね」
飛羽は手を振りながら歩き出す。
腰には、不思議な緑色の刀。
その背中を見送りながら、蛍は小さく呟いた。
「……絶対、帰ってこいよ」
「――聞こえてるよ、兄貴」
飛羽は振り返らず、ニヤッと笑った。